2010年9月23日アーカイブ

60歳の還暦記念に富士山に登って以来、年に1~2回奥多摩や高尾山など日帰りハイキングを楽しんでいる。

早朝の電車には同じような歳の方が一人で乗って来る。

高齢者のグループが一番多いが高齢者の『独り歩き』の方も結構いる。

そんな中で私も『オヤッ』と思うのが若い女性の素敵な山歩きスタイルだ。

ついこの間まで、山歩きをする女性のイメージとしてはあまりオシャレなどには関心が無く、質実剛健、化粧っけも無く、ひたすら頂上を目指す~といったもの。

アウトドアブームの底流が生まれ、ジョギング、ウオーキングも最近はファッション性の高い専門ウエアが出てきたし、登山、トレッキング、ハイキングの専門メーカーが作るウエアもきれいな色使い、デザインが生まれてきた。

新しいマーケットが生まれ、女性たちが好んで買い、相乗効果を生んでいる。健康志向でマーケティング的にも良い傾向です。

山スカートも街中でミニスカートとスパッツの組合せがこんなに一般的になった今、センスのある女性たちが山歩きにも持ってきた理由もよく分かる。

私が遭遇した何人かの山ガール、見た目も決して悪いものではないです。スタイリッシュでカッコ良いです。オシャレです。

ジョギングやテニス、バドミントンなどのユニフォームに比べれば別に露出度が多い訳でもない。山歩き、トレッキングは樹木、棘のある植物、とがった岩石など運動環境は肌を露出するのは適さない。山スカートとは言え、そこはしっかりと守られています。

 

今朝の朝日の投書欄に『お気楽過ぎないか山ガール』と題して浮かれ過ぎた山ガールに44歳の女性からのキツイ一言が載っていた。

奥多摩で遭遇した山ガール達が余りにも傍若無人であり、自然を守り、愛する登山者としての資質に欠け、軽薄で浮かれ過ぎているという指摘だ。世代格差もあるように感じる。

山ガール、山スカートという新語に何となくネガティブな要素を感じてきたが問題は実在したんだ。

山歩きの基本も知らず、オシャレしてチャラチャラしてんじゃねーよという先輩の本音だ。

本質を学ばず、教えられず、外見だけは一人前以上のカッコじゃいけませんよ、確かに。

多くの日本人が納得する論法だ。

だからと言って初心者は地味な服装で隅っこに居ろ、というのも戦前の(死語か)封建主義的すぎるような気もしますが。

 

投書にあった奥多摩の実話ではその山ガールがゴミは山に捨てずに持ち帰るものだ、と言うところまでは理解し実践出来たのだが、下山した駅前の飲食店の方に『これ捨ててくれると嬉しいな』といってゴミ袋を差し出したそうです。自宅まで持ち帰るという気持ちは無いのかというもの。山が好きなら他人のゴミも拾って持って来る位の気持ちでいて欲しいというもの。

そう言えば私も駅のゴミ箱に捨てた事があるな。

自戒、反省。

シーズン真っ盛りの槍ヶ岳頂上で男性タレントがちゃぶ台を前にインスタントラーメンを食べているところをヘリから空撮するという。

大手食品メーカーのラーメンのブランドリニューアル広告だ。

最近はハリウッド映画を見れば分かるようにCGI技術が発達し、どんな難しい撮影状況であってもコンピューター上に再現する事が可能だ。しかし実写の強さ、真実の持つ強烈なインパクトはコンピューターのモニター上の虚構を超える。クリエーターなら誰でもそう思う。

でもシーズン中の槍ヶ岳頂上でそれが実施出来るとは冷静に考えれば誰も思わない。

しかし今回実施の決定がなされ、現実に撮影に向かって全ての準備は進んでいった。

2010年8月3日、男性タレントは真面目に早朝から槍ヶ岳に登り、美術部は真面目にちゃぶ台を抱えて槍ヶ岳に登り、制作部は真面目に熱湯をポットに入れて槍ヶ岳に登り、APは真面目に商品と箸を大事に抱えて槍ヶ岳に登り、ヘリコプターのパイロットは危険性をどう排除するか、太陽の位置を計算しながら真面目にカメラマンを乗せてヘリポートから槍ヶ岳頂上に向かって飛び立った。全員が真面目に取り組んだ。

 

"For the Client"

この広告主は昔から広告の可能性に対して挑戦する心を持つ広告主だ、広告上手。こちらの広告を担当する事で育ったクリエイターも沢山いる。

クリエイター達は無限の挑戦をさせてくれるこの広告主に対して次々と人のやらない、いや思いもつかないアイディアを出し続けてきたのだろう。

以前有名なクリエイターの言葉で『目立つだけなら裸の女性を出せばいい、それをしないのが上手な広告だ』と聞いた。

人がやった事も無い、思いもつかない事を考え続ける、それがTVCMの企画。

 

朝日新聞にあの投書が載らなかったら、あのCMは既にオンエアーされ、かなりの評判になり、CMのコンクールでも入賞したかもしれない。アイディアを出したクリエイターも社内外で賞賛されたでしょう。

同じCM制作業界に所属する者としてCMの企画が世間の常識を外れても目立てば良い、そんな突飛な事ばかりを考え、実行するのがお前らの会社の仕事かと判断されるのが辛い。

槍ヶ岳の頂上で男がワシワシと新製品のラーメンをかっ食らう。

シュールな馬鹿、訳の分からぬ可笑しさ。ヒューマニティー。思わずニヤリとしてしまう可笑しさ。泣いてしまうほど悲しい馬鹿。

一昨年亡くなった市川準サンも得意とした世界だ。

 

やっぱり、まだまだ表現の枠は無限大なんだ。

CMクリエイターの皆さん、今回の一件にめげず、まだまだ新しい発見に務めようぜ。

プロフィール

1948年生まれ、水瓶座、O型。
趣味
(読書、映画、テニス、ゴルフ)
ラーメン好きのオッサンです。

カレンダ

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