2月の始めにバンコクのコーディネート会社のM嬢からメールを頂いた。
彼女は私と同じ中央大学を出てから、タイの有名大学を出て、有名企業に就職が内定していたのにも拘わらず、映像制作会社兼現地コーディネート会社であるS Filmに自分の職を選んだ。
15年前、彼女がS Filmに入社当時、私も2度ほどバンコクに行く機会があり、その時にお目に掛かっただけだったが、その利発そうな雰囲気と持っている言葉に大変感心した覚えがある。
私の昔の仕事仲間(お客様)Aサンともとても仲良くなり、確か日本に来た時に一緒にご飯を食べた。
その昔の仕事仲間(お客様)との関係で映画『プール』の現地プロデューサーを務めたようだ。『プール』でロケ現場となったプール付きゲストハウスを持っている財団『バーンロムサイ』に再就職する事になったという報告だった。
この財団はHIV感染孤児のための生活施設で、目指しているのは「寄付だけに頼らない、自立した生活基盤を築く事」、自分達で収入を生み出すための様々なプロジェクトがいくつも同時進行しているそうです。
彼女はこう言います、『私がこの財団に行こうと思ったのも、社会貢献の為などではなく、むしろ何か面白そうな事が出来そうだな』という予感に導かれてのことです。
2年前の『プール』の撮影でここのゲストハウスを借りてから彼らとの交流が生まれ、今回転職を決意するに至ったと言うのです。
そしてここで自分にどれだけの働きが出来るか、正直ちょっと不安ではあるが、一か八か、いや、とにかく精一杯頑張ってみようと言っている。
実に肩に余分な力の入っていない、しかししなやかな、芯が通った身の処し方。
最近は海外に出かける若者が少なくなり、型破り、冒険好き、海外雄飛型の若者が少なくなったと分析されている。商事会社へ就職しても海外勤務を敬遠する輩も増えてきたと聞く。
そんな日本の腑抜けた若者事情の中で、彼女の人生の作り方がとても素敵に見えてくる。
『プール』は小林聡美、もたいまさこらが作る温かな空気感がジンワリと伝わる全く気負いがない映画。チェンマイのゲストハウスでは最後まで時間がゆっくりと流れている。
映画の主題のような選択をM嬢はしたみたいだ。
遠からず一度はチェンマイのゲストハウスを尋ねてみたい。